管理者として知っておきたい経営学 -理論と実践の融合-
(立教大学大学院MBAコース監修)
八木 麻衣子
岩﨑 裕子
岩﨑 裕子(YMCA米子医療福祉専門学校)
現在、団塊の世代が75歳の後期高齢者に達する2025年を目途に、地域ごとの医療介護提供体制の再整備を目的とした医療介護の一体改革が進んでいる.急速な高齢化によりもたらされた慢性疾病の増加に代表される疾病構造の変化は、救命、治癒、社会復帰を前提とした「病院完結型医療」から、いくつかの病気と共存しながらQOLの維持・向上を目指す医療、つまりは、地域全体で治して支える「地域完結型医療」への転換を必要としている.医療介護の一体改革とは、いわば地域ごとに医療・介護ニーズと提供体制の間のミスマッチを是正するための取組であり、我々を取り巻く現場はダイナミックに変化しているのである.
そのため、我々のような医療専門職でも、経営(マネジメント)や経営理論を学ぶ重要性が増している.「組織を運営する」ということは、自らが持つ「ヒト」、「モノ」、「カネ」、そして「情報」を有効に活用することで最大限の結果を出し、その組織の「価値」を高めることが目的となる.また、「正解のない活動の中で問題を整理し、最善策を導くための思考方法」である経営理論を活用し、常日頃から最適解を求めるトレーニングを重ねておくことは、たとえ現在のような複雑な状況に置かれたとしても、戦略的な行動を選び取るための基盤となるのである.私たちが経営学を学ぶ最も大切かつ重要な目的は、この経営資源である「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」についての経営理論の基本を体系的に習得し、身の回りで起こっている物事の全体像を俯瞰的に捉える能力を磨き、最善の方法を選択し実践できるようになる、ということであろう.
しかし、経営理論はいわば「公式」であり、それを応用して実践問題を解いていかなくては何も始まらない.リアルワールドでの目標達成や問題解決のためには、問題点を明らかにした上で、現場で実践できるような具体的な対策に落とし込むこと、その目的や見込める効果を説明してスタッフの意識の統一をはかること、実際に現場でスタッフをまとめて取り組みを展開すること、などの「理論を実践に落とし込んで、それを実行する能力」が重要となる.結果を出している人達の多くは、理論を実践の歯車を回し、適切な目標設定を立てて対策を実行し、数多くの応用問題を解いて成功体験を重ねているのである.
そこで本研修では、まず経営理論を有効活用するための心構えを共有することから始め、臨床現場の組織マネジメントに有用と思われる経営理論を体系的に紹介する.その上で、グループワークを通し、経営理論を現場へ落とし込む方法や、理論と実践を車の両輪のように回すことの重要性を理解し、実践への基盤を得ることを最大の目的とする.本研修が、参加者それぞれの現場における問題解決の一助となれば幸いである.
- 本研修の狙い
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臨床の現場での組織マネジメントに有用な経営理論を学び、かつ理論と実践の両輪を回すことの重要性を理解する。
- 身につける能力
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- 経営理論を使いこなすための心構えを理解することができる
- 臨床現場の組織マネジメントに有用な経営理論の基本的な内容を知ることができる
- グループワークを通し、基本的な経営理論を現場へ落とし込むための方法を知ることができる
- グループワークを通し、理論と実践の両輪を回すこととの重要性を理解することができる
- グループワークを通し、問題解決のためのディスカッションの重要性を理解することができる
- 略歴
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<八木麻衣子 略歴>
聖マリアンナ医科大学東横病院リハビリテーション室主査.立教大学ビジネスデザイン研究科兼任講師.
博士(経営管理学).理学療法士.研究テーマは医療経済,医療経営,リハビリテーション医学,理学療法学,医療安全,臨床疫学など.コメディカル組織運営研究会運営スタッフ.<岩﨑裕子 略歴>
1988年九州リハビリテーション大学校 卒業、総合病院、介護老人保健施設などの臨床経験後、YMCA米子医療福祉専門学校、文京学院大学保健医療技術学部に勤務し、2013年より現職。専門理学療法士(教育・管理理学療法)、博士(経営学)。
役職:日本理学教育学会運営幹事、コメディカル組織運営研究会代表、産業・組織心理学会理事