運動器系理学療法のアップデート
~超音波エコーが起こすイノベーション~
運動器系理学療法では関節の機能障害や筋機能障害により生じた運動器の疼痛に対して理学療法介入を通じて、症状の消失と再発予防を行う。疼痛部位に対して、直接物理療法などの介入を行うこともあれば、それを引き起こす組織の拘縮や筋力低下にアプローチすることもあるだろう。しかも、介入は皮膚の深層で何が行われているかも分からない。多くの経験をしてきたセラピストは、自身の手から必要な情報を読み取り、症状を変化させてしまう。まさにゴッドハンドである。しかし、このようなゴッドハンドでは、治療の説明責任を患者や同僚にも果たすことはできない。今日の医療は多職種の連携で成り立っており、医師をはじめとした多くの医療従事者が患者を取り囲んでいるわけで、スクラムを組んで治療に当たる。その際に、理学療法士が独自の理論という妄言を揮っていては、チーム全体が困惑し、本当に患者を救っていると言えるのであろうか? 理学療法学は治療科学であり、理学療法の評価、治療のプロセスを科学的思考の下に示すことが、他者の理解を得るためにも求められる。これまでの運動器系理学療法評価と治療の過程を『力学的ストレスの明確化』『解剖学的評価』『運動学的評価』の3つステップに分解することを提唱している。しかし、既存の解剖学的評価や運動学的評価の検査測定では十分に問題となる組織や機能を抽出できないことも少なくなかった。これが従来の理学療法の壁であった。超音波エコーは、身体内部を非侵襲的に観察することを可能にし、これまでの壁を越えて、理学療法士の妄想(ブラックボックス)を証明できる可能性を秘めている。本講習会では以下の5つの組織にターゲットを絞り、最新の知見とともに、エコーでの描出も体験してもらう。
1. 膝蓋下脂肪体(IFP)の動動態評価
2. 腓腹筋内側頭と半膜様筋に滑走性評価
3. Kager’s fat pad(KFP)の滑走性評価
4. 荷重時の側腹筋の機能
5. 小殿筋の機能とエクササイズ
どう治すかより、どこを治すか? 正確な評価ができれば、治療はシンプルになる。これまでのように漫然とした理学療法は平成で終わりにして、ターゲットを絞って、確実に治す。そんな理学療法が新たな時代に求められる。エコーが起こしているイノベーションを体験してもらいたい。
- 本研修の狙い
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運動器リハビリテーションにおける超音波エコーの応用を学び、理学療法への応用することで得られる効果を理解する。
- 身につける能力
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- 1) Rehabilitative ultrasound imaging (RUSI)の概念を理解できる
- 2) RUSIの臨床応用を理解できる。
- 3) 運動器の主要な構造のエコー像を描出できる
- 4) 運動時、動作時の運動機能のエコー像を描出できる
- 略歴
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2014年 森ノ宮医療大学保健医療学部理学療法学科 講師 2015年 森ノ宮医療大学卒後教育センター 副センター長 兼務 2016年 鈴鹿医療科学大学大学院医療科学研究科医療科学専攻 博士後期課程修了 博士(医療科学)取得 2018年 森ノ宮医療大学保健医療学部理学療法学科 准教授