第31回大阪府理学療法学術大会

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ここまできた脊髄性筋萎縮症(SMA)の診断と治療
~早期発見・早期治療とリハビリテーションの重要性~

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、ある年齢から筋力が徐々に低下する、いわゆる”神経筋疾患”の一種である。原因はSMN遺伝子に欠失や変異が生じることで、正常なSMN蛋白が作れなくなることであり、結果的に脊髄の前角細胞(運動神経)が萎縮し、運動神経が麻痺、筋力が進行性に低下する。発症頻度は1~2万人に1人とされており、神経筋疾患としては比較的高い頻度でみられる。

SMAは、発症年齢と到達できる最も高い運動能力から、大きく4タイプ(I型~IV型)に分けられる。I型は、発症年齢が生後0~6ヵ月で座位が獲得できず、II型は、発症年齢が生後7ヵ月~1歳6ヵ月で、座位までは獲得できるが立位は不可、III型は、発症年齢が1歳半以降で、歩行可能だが徐々に筋力が低下する。IV型は成人型で運動発達は正常範囲である。

SMAは、筋ジストロフィーと異なり、一般採血検査で測定されるCKやASL(GOT)等の上昇がみられず、一般的な染色体検査も正常所見であり、CTやMRI等の画像検査でも診断が不能であるため、フロッピーインファントや子どもの運動発達の遅れとしてリハビリをうけ、未診断のまま経過している例もある。進行性の筋力低下や腱反射低下、または手の揺れや舌の震え(繊維束攣縮)といったSMAの特徴をよく知っておき、診察所見でSMAを疑い、本疾患特有の遺伝子(SMN遺伝子)検査を施行するしか診断ができない。特にI型は進行が早く、筋力低下は呼吸症状に及び、医療介入がなければ余命は2歳未満とされるなど、発見の遅れが予後につながる。

今までは、先天性ミオパチーや筋ジストロフィー等の神経筋疾患と同様に、根本的な治療法はなく、医療介入としては、人工呼吸器療法[侵襲性(TPPV)、非侵襲性(NIPPV)]、経管栄養、整形外科(側弯の治療)といった対症療法や理学療法のみであった。しかし、SMAでは遺伝子修飾治療がはじまり、筋力低下が停止することはもとより、筋力の改善も目指せるようになった。2019年5月現在、わが国では2017年に発売されたヌシネルセン(スピンラザ®)という薬剤のみが治療薬剤として発売されている。

ヌシネルセンは髄腔内投与であり、治療には経験が必要である。我々のような専門医療機関が治療を担う事が多いが、SMA患者の筋力の維持または改善を目指した治療には、ヌシネルセン投与だけでは難しく、理学療法との連携がとても重要と考えている。それは、定期的な施術と、家族や本人への指導、さらには薬の効果判定として、SMA患者の運動機能を経時的に詳細に評価する必要があり、リハビリ医や理学療法士からの情報は重要である。

当センターでは8例への治療経験を有し、全例で効果がみられ、重篤な副作用はみられず、経過は良好である。本講演では、治療前後の様子を動画や写真で提示し、できるだけ分かりやすく治療効果を説明する予定である。本講演が、SMA患者のために、理学療法士の皆様との連携推進の一助になれば幸いと考えている。

岡崎 伸(大阪市立総合医療センター 小児神経内科)
略歴
1996年3月国立福井医科大学医学部医学科 卒業
1996年4月医師免許取得
1996年5月大阪府済生会中津病院 小児科 研修医
1997年4月京都大学医学部付属病院 小児科 研修医
1998年5月兵庫県立塚口病院 小児科 医員
2001年4月大阪市立総合医療センター 小児神経内科 研究医
2006年1月大阪市立総合医療センター 小児神経内科 医長、副部長
小児科専門医
小児神経内科専門医
てんかん専門医
所属学会
日本てんかん学会
日本小児神経学会
日本小児科学会
日本緩和医療学会

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